ASMRtist&リスナー注目のバイノーラルマイクとダミーヘッド


microphoneの写真

チェックポイント
「VR360度の世界にも。活用の場が広がるバイノーラル技術」

ASMR動画には欠かせないバイノーラルマイクは、ASMRtistだけでなく、ASMR動画を楽しむ視聴者にとっても気になる機材の一つです。

ここでは、人気のASMRtistも使用しているバイノーラルマイクやダミーヘッドと、バーチャルリアリティにも活用されているリアルな立体音響の魅力にクローズアップしていきます。

また、これからバイノーラル録音制作をしたい方も是非参考にしてください。

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バイノーラル録音の魅力と流行

ステレオ録音といえば、私たちが普段よく耳にする音楽が際も身近ではないでしょうか。

バイノーラル録音は、通常のステレオ音声では再現できない部分をカバーし、まるでその場に居るかのような臨場感と音響効果を再現できることで視聴者から支持を得ています。

ダミーヘッドには高価な物もあり手軽に購入できるものではないイメージがありますが、近年では安価なイヤホン型バイノーラルマイクが発売されたことや、ASMR動画の人気の上昇と並行してバイノーラルサウンドはプロフェッショナルな現場のみならず一般ユーザにも徐々に普及が進んでいます。

バイノーラル録音については、こちらの記事でもASMR動画を交えて紹介しています。

バイノーラル録音に必要な機材と録音方法

まず最初に、音声を録音する時の基本となる必要機材について触れておきます。

録音を行う時には、マイク以外のオーディオインターフェースが必要になります。

・バイノーラル録音用のマイク

・レコーダー

最低限必要なのはこの2つです。

わかりやすく言えば、バイノーラルマイクは音を拾うもの、レコーダーは音を録音・再生するものです。

人間の頭部を模倣したダミーヘッドを使用して録音する場合は、マイクロホンをダミーヘッドの両耳にセットして録音を行います。
マイクロホンは、モデルによって標準装備されているタイプと他のメーカーの製品と組み合わせるタイプがあり、装着したマイクロホン・カプセルから音を拾うことができます。

ICレコーダーは、本体にマイクロホンを内蔵しているため単体でも録音が可能ですが、より高音質なステレオ録音やバイノーラル録音を行う場合は、外部のマイクロホンを接続して使用します。

この他にも、パソコンで音声の編集、ミキシングをおこなうためのDAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトや、より低ノイズ・高音質な音を録音する為に、マイクプリアンプをオーディオインターフェースとして使用することもあります。

このように、音のクオリティには高品質なバイノーラルマイク以外の要素も含まれるため、いいマイクだけを使ってもバイノーラル録音を行っているASMRtistと同じ音を再現できるかは、一概に言えるものではないということがわかります。

ASMRtistも使用しているダミーヘッド&バイノーラルマイクとASMR動画

機材の違いによってバイノーラル録音された音声はどのように聞こえるのでしょうか?

まずは、ASMRtistが使用するバイノーラルマイクとダミーヘッドをASMR動画で体感してみましょう。

視聴の際はヘッドホンもしくはイヤホンのご用意を。

ダミーヘッド

ASMRtist:Asmrsurge
ASMR Soap carving

石鹸を削るスクラッチ音が心地よい非常に人気のある動画のバイノーラルサウンドです。

使用されているマイクは、イヤホン型コンデンサー・マイク“Roland CS-10EM”で、Binaural Enthusiast社“B1-E DUMMY HEAD”のダミーヘッドに装着して録音しています。

ASMRtist:Caroline ASMR
ASMR Binaural Head Tapping and Scratching 1 Hour // No Talking

使用されているダミーヘッドは、Binaural Enthusiast社“B1-E Dummy Head with BE-P1 Binaural Microphones”モデルです。

ここでは頭部からダミーヘッド全体にかけてのタッピングとスクラッチ音を聞くことができます。

両者のダミーヘッドは、ASMRtistの”Deep Ocean of Sounds”さんが販売をしている物を使用しているのですが、詳細は後の記事で紹介します。

バイノーラルマイク

ASMRtist:Heather Feather ASMR
Binaural ASMR Tingle Blitz: Brushing and Cleaning Your Ears

Heather Feather ASMRさんの動画では、4つの異なるブラッシングを使った耳へのスクラッチ音を聞くことができます。

ここで使用されているバイノーラルマイクは、3Dio社の“Free Space Pro II”です。

このモデルにはDPA(Danish Pro Audio)社の“DPA 4060”というマイクロホンが内蔵されています。

ブラシの毛先の柔らかさや硬さの質感をリアルに感じ取ることができるバイノーラルサウンドです。

ASMRtist:EMOJOIE KITCHEN
【ASMR料理]ひき肉パルメンティエアッシェパルマンティエ

EMOJOIE KITCHENさんの動画では、調理時の食材のカット音や煮込み音、調味料の音などのトリガーを聞くことができます。

バイノーラルマイクには、イヤホン一体型コンデンサー・マイク“Roland CS-10EM Binaural Microphone”が使われています。

高性能バイノーラルマイクとダミーヘッド

ここでは、先ほどのASMR動画の中でも登場したバイノーラルマイクやダミーヘッドの詳細をまとめています。

ノイマン(Neumann)・ダミーヘッド

ノイマン(Neumann)は、マイク技師のゲオルグ・ノイマン(Georg Neumann)とエーリッヒ・リックマン(Erich Rickmann)の2人によって”Georg Neumann GmbH”としてベルリンに設立されました。
コンデンサーマイクやモニタースピーカーなどのプロフェッショナルツールを手がけており、商業音楽の世界では、エンジニアやミュージシャンに絶大な信頼と支持があるマイク・ブランドです。

ノイマン社のダミーヘッドの歴史は、1972年にベルリンでのラジオ・テレビ展覧会で商業用ダミーヘッドマイクとして“KU 80”が発表されて以来、“KU 81”から“KU 100”とモデルチェンジを行い進化を遂げてきています。

ノイマン(Neumann)KU 100
ノイマンku-100の写真
出典:楽天市場NEUMANN KU100

非常に高価なこともあり主に音響研究での測定装置として使用されるのが一般的ですが、あたかもその場にいるような疑似体験ができるリアリティのある音声の収録技術は多くのリスナーの関心を集め、現在では音楽のレコーディングやラジオなど様々な現場で活用されています。

3Dioバイノーラルマイク

3Dio社は、ミュージシャン兼エンジニアの”Jeffrey Anderson(ジェフリー・アンダーソン)”が2013年に創設し、バイノーラルマイクロホンを専門とした開発と販売を行っている会社です。

Free Spaceシリーズは、シリコンラバーの疑似耳介を持ったバイノーラルマイクロホンで疑似頭部を採用していませんが、3Dio社独自の技術により高品質な集音能力を兼ね備えています。

目標は、たくさんの人が楽にバイノーラル録音をスタートできるように、使い勝手・価格・性能のバランスが取れた製品でした。 一番の問題は、両耳の間にある頭部でした。
引用:http://mimimic.com/

ダミーヘッドのデメリットは機動力です。そこで頭部の代わりとなる円盤を両耳の台座にすることによって、ダミーヘッドと同等の集音能力を得ることを実現し、持ち運びの利便性やリーズナブルな価格を実現した高性能バイノーラルマイクが誕生しました。

近年ではASMR動画、バーチャルリアリティ、スタジオ録音など様々な世界で活用されています。

3Dio Free Spaceの活用例
Hear New York City in 3D audio

The Verge

こちらは、メディアネットワークの”The Verge(ベルジェ)”からの映像です。
この動画の中では、3Dioを使用した街角での音声の収録や、コンサート、ASMR動画などからバイノーラル録音の臨場感をダイジェストに体感できます。

Free Spaceシリーズ

Free Spaceには3種類の製品があります。

両耳にはコンデンサーマイクカプセルを仕込んであり、頭部の代わりに、3Dio社独自の技術による円盤を両耳の台座にすることによって同等の効果を得ることができています。

内蔵されているマイクロホンや疑似耳介の配置によってグレードに差があります。

Free Space
freespaceの写真
出展:3Dio http://3diosound.com/

Free Spaceは、シリーズの中では際も低価格ながらも、高品質なバイノーラル録音が可能なバイノーラルマイクです。
ASMR動画でもよく使用されているので目に触れる機会も多く、実際の音を体感したことがある人もいるかと思います。

マイクロホンには、“プリモEM172マイクカプセル”を使用しており、ノイズを抑え感度の良いバイノーラル録音を可能にしています。

Free Space Pro ll
freespace2の写真
出典:3Dio http://3diosound.com/

Free Space Pro IIは、デンマークのマイクロホンメーカーDPA(Danish Pro Audio)社の高品質なミニチュアマイクロホンを使用しています。

DPAの4060無指向性小型マイクロホン
sc4060の写真
出典:DPA http://www.dpamicrophones.com/

ここで使用されている“4060マイクロホン”モデルは、自然音の繊細なバイノーラル録音に相応しい低ノイズ・高感度でダイナミックレンジが広く、3Dio社のバイノーラル技術に最適な組み合わせとなっています。

Free Space Omni
omniの写真
出典: http://3diosound.com/

Free Space Omniは、水平360度方向を4等分に割った90度方向に疑似耳介(じかい)を両耳配置しており、これにより360度バイノーラル録音を可能にしています。

この技術は、バーチャルリアリティ(VR)の映像制作にバイノーラルサウンドを追加する場合にも理想的な構造となっています。

マイクは“プリモEM172”を標準装備しており、オプションでFree Space Pro IIと同じ“DPA 4060”を選ぶことができるFree Space Omni Proモデルがあります。

この360度サウンド体験が出来る代表的な例は、3Dio社の社長であるジェフリー・アンダーソン自身がミックスとマスタリングを行った、360度コンサート受賞作品のBeck “Hello Again”で聞くことができます。

Beck “Hello Again”

Beck “Sound and Vision” from Chris Milk on Vimeo.

3Dio社の製品は日本の輸入代理店で購入することができます。
耳マイクドットコム:http://mimimic.com/

ダミーヘッドマイクの制作も手がけるDeep Ocean of Soundsさん

高品質な3DバイノーラルサウンドASMR動画が人気のASMRtist“Deep Ocean of Sounds”として活動するPawel(パウエル)さんは、自身も使用しているダミーヘッドマイクの製造と販売を行っています。

彼のブランドBinaural Enthusiast社の製品は、比較的安価な値段にも関わらず高品質なバイノーラル録音が可能なため、多くのASMRtistにも愛用されています。

B1-E DUMMY HEAD

binauralenthusiastのダミーヘッド写真
出典:http://binauralenthusiast.com/

バイノーラルマイクには、低ノイズかつ静かな音を録音するのに最適な同社の“BE-P1”が装着されている物と、マイクなしのモデルがあります。
オフィシャル販売サイトによると、推奨される外部のマイクには“Roland CS-10EM”モデルが適しているとしています。

Binaural Enthusiast:http://binauralenthusiast.com/

B1-E DUMMY HEADが体感できるASMR動画

このダミーヘッドの集音能力は“Deep Ocean of Sounds”さんのYouTubeチャンネルの中で聞くことができます。

(3D binaural sound) Trigger finder – 23 most popular asmr triggers

人気の23トリガーの紹介動画です。

ハサミのカット、タイピング、紙を擦る音など豊富なトリガーで立体音響を体感できます。

(3D binaural recording)Asmr virtual hairdresser/barber – Binaural Enthusiast

美容院でのロールプレイです。

髪を洗う音や霧吹きスプレーの音、カットとバリカンの音の他に人の足音などが音源の広がりを感じさせてくれる動画です。

Deep Ocean of Sounds https://www.youtube.com/user/DeepOceanOfsounds

ROLAND CS-10EM バイノーラルマイク

際も手軽にバイノーラル録音を行えるイヤホン一体型コンデンサー・マイク“Roland CS-10EM”モデルは多くのASMRtistや投稿者に愛用されています。

イヤホン型は、自分の耳に装着して録音を開始するだけで自身をダミーヘッドに見立てるように360度の立体音響を収録することができます。

ローランドcs10emの写真
CS-10EM

このマイクに接続するレコーダーには同社のR-09R-05シリーズが推奨されており、レコーダーから供給するプラグイン・パワーでレコーディングできます。

CS-10EMのようなイヤホン型は、ICレコーダーとマイクだけでも高品質な録音が可能となり、YouTube動画で手軽にバイノーラル録音を行いたい投稿者にはコストパフォーマンスの良いマイクロホンです。

まとめ

これからバイノーラル録音をしたい、興味がある人にとっては、目的や予算に合わせた活用方法がいくつか考えられると思います。

先を見据えればバーチャルリアリティのプラットフォームが整ってきたこともあり、バイノーラルマイクロホンは斬新なコンテンツを発信するクリエイターや企業、ASMR動画投稿者の強力なツールとヒントになりうるものではないでしょうか。

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